牛乳を毎日飲めば乳糖不耐症は治る?10ヶ月検証した結果

牛乳飲んでも腹壊さないのはとても幸せなこと
牛乳飲んでも腹壊さない人間の笑顔はまぶしい

牛乳を飲むと激しく腹を壊してしまう。牛乳が飲めるようになりたいというよりも、この厄介な体質をどうにかしたい。子供の頃あんなにガブガブ飲んでいたのに、どうしてこうなった。

なぜ腹を壊すのかを調べてみたところ、牛乳に含まれている「乳糖」を分解できないからだと書いてあった。本来は小腸で分解→吸収されるはずの乳糖が、乳糖のまま大腸へ送られることで諸症状を引き起こす。乳糖不耐症というらしい。

乳糖は、小腸に存在するラクターゼという消化酵素によって分解されるのだが、多くの人は離乳後にラクターゼの量が減少したり、活性が下がったりするようなのだ。

……これ本当だろうか。「乳糖不耐症の成人が多い」という情報に限っては、どうも疑わしく思う。

よくミルクスタンドで牛乳飲んでる人を見かけるけれど、それこそ老若男女、かなり年齢の幅は広い印象がある。軽く自分の周りに聞いてもみたが、普通に飲める人ばかり。「そういえば最近牛乳飲んでねーわ」って人はいたけど。

うーん、まあそのことはいいや。とにかく、大人が牛乳飲んで腹を壊したとしても、変なことではないということだ。

ただ、「牛乳を毎日飲んでいればそのうち乳糖不耐症は治る」というような情報も、まことしやかに書かれていたりするのである。

また出た。なんなんだその当てにならなそうな情報は。

でも毎日飲むだけでいいのなら簡単だし、続けられそうな気はするかも。よっしゃ、実験台になろうじゃないか。そうと決まれば善は急げだ。さっそく今日から毎日牛乳飲むぞ!ゴクゴクゴク。

⸺30分後。

タイム!ちょ、ちょっと待って!

……これは無理だ。百パー腹壊すとわかった上で飲むってめちゃくちゃ勇気いるぞ。それも毎日て。だいたいさ、そのうち飲めるようになるって具体的にいつだよ。(それを検証する実験台です)

はぁ…一度失敗しないとわからんこの性格どうにかしてえ。

まず何が辛いって、下痢が辛い。ある程度出しきって我に返ったとたん、急に換気扇の音が聞こえてくるぐらい辛い。それもただの下痢じゃない。牛乳を飲んでから排泄に至るまでのプロセスを全部スルーしてきたかのようなダイレクトアタック。しかも出口を間違えている。

これ毎日続けてたら健康的にも良くない感じするわ。ここはいったん、どうして下痢するのかを知る必要があるな。

調べてみたところ、乳糖不耐症によって引き起こされる下痢は、浸透圧性下痢というやつらしい。

通常、大腸にたどり着いた内容物は、腸壁に水分を吸収されて固形化する。つまりウンコになる。一方、乳糖が大腸に入ってきたときは、腸壁から水分が出てくるということが起こる。水分量が増えるから下痢になるわけだ。浸透圧性下痢とはこういうこと。

でも思うのだ、下痢になるのは牛乳が液体であることの影響も大きいのではないかと。

飲んだ牛乳の水分+大腸で分泌された水分=ストロング下痢。

ちょっと訂正。このときはそう思ったんだけど、実際は「摂取した水分のほとんどが小腸で吸収されている」ので、牛乳が液体であることと下痢には何の関係もない。でも話はそのまま続きます。

どうにかして水分を取らずに牛乳を飲めないだろうか⸺。

そんなこと無理に決まっ……いや、できるぞ!

そう、牛乳の脂肪分を除去して乾燥させた粉末、スキムミルク(脱脂粉乳)なら可能なのだ。乳糖に関しては処理されていないので、スキムミルクにはそのまま乳糖が含まれている。まさしく今回の検証のために存在しているかのような食材である。

ということで、スキムミルクとオートミールを少量の水で捏ねたものを、毎朝食べることにした。分量はスキムミルク約60g、オートミール約1.5カップ。正確には、これにドライフルーツとナッツを混ぜ、砂糖で味付けしている。便宜上「捏ねた」と書いたが、うどんの生地のような固まりにはならない。要するに、フルグラの亜種みたいなもん。

よつ葉乳業によれば、スキムミルク10gを90mlの水に溶かすと、無脂肪乳100mlと同じ濃さになるとのこと。なので今回の検証では、牛乳600ml分の乳糖を一度に摂取することになる。

下記が1ヶ月分の材料だ。全てネットで調達した場合のコストは9000円ほど。

  • スキムミルク|2kg

  • オートミール|4kg

  • ドライフルーツナッツ|2kg

  • グラニュー糖|500g

牛乳からスキムミルクに加工される過程で、ほとんどのビタミンが失われる。今回朝食はこれしか食べていないため栄養バランスが気になった。トッピングでカバーするのも難しそうだったので、ポポンSでビタミンを補っている。その他ビタミン剤やサプリメントの類いは服用していない。

あっさりネタばらしをしてしまうと、この食事を始めてから下痢をすることはなくなった。やっぱり水分を取らない方が下痢しにくいのだろうか?

まあ理由はともかく、結果的に下痢をしなくなったということだ。そして幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。……とは、ならない。

新たな問題が浮上する。

下痢をしなくなったことで、乳糖が腸内に長く留まるようになった。このとき乳糖はどう扱われると思われるだろうか。乳糖が下痢を引き起こしていたことを一考するなら、そのまま排泄されるのが妥当に思える。でも違うのだ。

腸内には乳糖をエサにする細菌がいる。こいつらが発酵するための栄養源として、乳糖は利用されることになる。ただ、この細菌の仲間には発酵したとき悪臭を産生する種がいるのだ。悪臭とはつまり、オナラである。

それも尋常なガス量ではない。出しても出してもオナラが出る。オナラマシンガン。爆発寸前までエアを充填した風船のように腹が膨張し、触るとカッチカチなほど。一日中腹は張ったまま。オナラも一日中出続ける。

そしてこのオナラがまた臭いのだ。どんな臭いかをストレートに表現すると、ウンコである。発酵によってウンコの臭いにもバフがかかっているため、ただ事ではない。動物がこの臭いを嗅いだら怒って襲いかかってくると思う。

オナラには本当に頭を抱えた。電車内でトイレを我慢して悶絶するというケースはありがちだが、まさかオナラでそのような窮地に陥るとは……。

職場でも困ったことになる。腹がパンパンになるほどのガス量なのだ。まず我慢し続けるというのは不可能だし、オナラのたびに離席するのも現実的に無理である。特有のサウンドを響かせないよう細心の注意を払ってスカすのだが、あまりの奇臭に皆が周りをキョロキョロしたり、ざわめきが起こったりする。

「ねえ、なんか臭くない?」

「今日なんか臭いよね」

腹をさすったりなど、腹壊してるっぽい動きは絶対NGである。それは自ら犯人だと名乗り出ているようなもの。

多数の人がいる空間で急にウンコの臭いが漂ってくると、「誰か漏らしてるんじゃね?」という軽い胸騒ぎを感じるのだ。あるいは「誰かウンコ踏んでないか」かも知れない。臭いが持続するに従って、だんだん胸騒ぎは確信へと変わってゆく。

とりあえず、この頃は暑い時期だったので、ハンディ扇風機を巧みに使ってなんとか逃げ切った。

こうして、ごく狭い範囲ではあるがセンセーションを巻き起こした異臭問題。意外な形で幕を下ろすことになる。

検証生活を始めてからというもの、食物繊維をたくさん摂った日は体調がいいような気がしていた。それを確信できたのは、検証生活開始から数ヶ月が過ぎた頃。このタイミングでくだんの朝食に加え、夕食にワカメの味噌汁を飲むことにした。その後1ヶ月くらいで腹の張りはなくなり、オナラも通常に戻ったのだった。

おそらく、乳糖をエサにする腸内細菌のうち、悪臭を産生する種の勢力が下がったのだろう。腸内環境ってけっこう大事なんだなと思った。

さて、この検証は4月からスタートしている。時は過ぎ、12月になった。この頃になると、もう乳糖不耐症という感じではなくなってきていた。いたって普通の生活。

試しに牛乳飲んでみようかな⸺。

自分の中で思いが高まっているのを感じる。けれど、検証の甲斐無く下痢をしてしまう情景がちらつくのだ。あと一歩を踏み出すことができない。

そして年末。いつ牛乳を飲むかをウジウジ考えながら毎日を過ごしていた。流石に成果を試す時期に来ていると思う。

仮にダメだとしても、年開けてすぐ下痢したらダメージ大きいぞ⸺。

この問いかけが自分を奮い立たせた。

12月29日の夜遅くになってようやく重い腰を上げ、牛乳を買いに行った。ランニングがてら、自宅からちょっと離れたドラッグストアに行ったのだが、どの棚もガラガラで、「年末開けてる意味あるのか?」と思ったことを覚えている。幸い牛乳はまだ残ってた。

12月30日の朝食はスキムミルクではなく牛乳を使ってみた。

うんめえ!

ちょっと待ってくれ、牛乳がうますぎるんだが……。ずっと脱脂粉乳を使っていたせいで、脂がめちゃくちゃうまく感じるのだ。ミリとかセンチ単位だったのが光年にインフレしたくらいのうまさ。そして濃い。牛乳ってデフォルトでこんなに濃かったのか。牛さんありがとう!

話を戻そう。あまりに牛乳がうますぎたので、「別に下痢してもいいや」という気持ちになってしまったが、結局下痢はしなかった。午後に50/50でカフェオレを作って飲んでみたが問題ない。

12月31日。まだ1Lパックの半分ぐらい牛乳が残っている。ここまで来たらやるしかないだろう。ラッパ飲みで一気に流し込んだ。うん、大丈夫だ。

500ml飲んで平気なら、もう何もいうことはない。検証は十分だろう。

といっても、今の食事をやめたら元の体質に逆戻りである。なので現在も同じ食事を続けてはいるのだが、検証としてはこの記事を終着点とする。

今回の検証生活では、確かに牛乳を飲んでも腹を壊さなくなったが、それは飲む量にもよる。一貫して牛乳600ml分の乳糖を摂取し続けてきたので、限界はその辺りだろう。

最後に、今回の検証生活は失敗例である。腸内環境が整っている状態を維持しつつ、最初は少量から少しずつ乳糖の摂取量を上げていけば、もっと早く成果を出せたと思う。

あと別にレギュレーションというわけでもないのだが、検証にバイアスがかかるのが嫌だったので、ヨーグルトやチーズなどの乳製品はなんとなく避けていた。でもよくよく思い返してみると、夏にバニラアイスを死ぬほど食っていたので、本文中で書くのはやめておいた。

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